お客様をおもてなす、驚きと感動を提供するメニューブック製作。オーダーメイド、小ロットでホテル・レストラン業界の特注ニーズに応える。

メニューブックショールーム

企業数が年々減少している製本業界において、異色の存在感を放つのが、小林製本株式会社(東京都日本橋)、グループ会社の株式会社アージング(東京都千代田区)。「メニューブックは黒と茶色だけ」という常識に挑戦し、お客さまの内装や雰囲気に合うメニューブックを企画・製造し、小ロットで飲食店やホテル、料亭などへ提案しています。

デザイナーが本やメニューブックのデザインを考えても、「それを形にできるところが無い」製本業界で、どのように小ロットでのオーダーメイドを可能にしているのか、お話をお聞きしました。

株式会社アージング メニューブックのギャラリー 株式会社アージング メニューブックのギャラリー

小林製本さんは、名前の通り製本業ですが、簡単に業務内容を教えていただけますか?

当社は創業昭和32年の製本会社です。創業当時は雑誌関係の製本を行っていましたが、2代目が現在の事業の形に着目し、官公庁関連の書類を整理して製本したり、企業の契約書や図面などを製本したりする事業となりました。

私達が製作する本は、・・・一般的に皆様が思い浮かべる「本」と言いますと書籍や雑誌だと思いますが、それらの量産される本とは異なりまして、プライベートな「本」です。ですから、皆様が書店で目にすることはありません。

契約書の他、領収書などをきれいに並べて製本もしますし、過去に出版されたバックナンバー、例えば毎月1号ずつの本でしたら1年間分、12冊を1冊の本として製本したりします。(合本と言います)。これまでのところ一番多い業務は、図面も含めた契約書の製本です。日本ならではのハンコ文化、書類文化ゆえの業態と言えるかもしれませんね。

近年ではペーパーレスも進み、紙の使用量は減少傾向ですので、新しい試みとして、当社では「型や版を使わずに自由な形で箔押しできる技術」、アージングでは「オーダーメイドのメニューブックの企画・製造」を行っており、料亭、レストラン、ホテルなどの皆様に喜んでいただいています。

オリジナルの伝票ホルダー お客様をおもてなしするオリジナルのメニューカバー(写真は伝票ホルダー)。金文字が箔押し技術。

製本業とは、出版・印刷業とは異なるのでしょうか?

出版・印刷業は、量産向け、つまり書店に並ぶ雑誌や本を製作します。出版があり、印刷があり、製本があって、書店に並びます。このときの製本は機械で行いますから、「100部だけほしい本」という小ロットのニーズには応えられないのです。

逆に、当社の注文数は1冊から、多くても100冊程度です。みなさんが一般的には目にすることのない本をたくさん製本しています。正しく言いますと「特殊製本」ということになります

今まで製本した中で一番大きかった本は、A1サイズでした。図面を見開きで閲覧したいというご要望で、製作させていただきました。また、このような分厚い本、なかなか珍しいでしょう?こちらはバラシといいまして、データを保存するために一度本をバラしてスキャン後、またもとに戻しました。

厚い本の製本

特別な本の表紙の修復も行います。このように傷んでしまった本が、

傷んだ本の修復

表紙を張り替えて新しくなりました。

傷んだ本の修復

こちらは合本です。バックナンバーを一冊の本にまとめます。・・・よく見ていただくと、一冊の本の中に複数の薄い本が綴じ込まれているのが分かりますか?複数の本をまとめて、表紙をつけるところを待っているシーンです。

複数本の合本

どうにも収集つかなくなってしまった契約書の山、こちらもきれいに製本させていただきます。

契約書の製本

他には、還暦祝いや父の日・母の日のギフトとして、ご両親が作られた詩や絵を一冊の本にするなど、なにしろ「特別な」本を製作しているのです。

一般に目にすることがなく、お客様の中に「こういう本が作れる」という発想がありません。私達からご提案させていただいて、大切な書類を保存する、思い出を保存するなど「あとに残す」お手伝いをさせていただいております。

感動のメニューブック作りとは、どのようなものですか?

メニューブックは、レストランやホテルなどでメニューを表示する際に用いるものですが、これまで、似たようなものしかありませんでした。デザインも画一的で、色も黒系で。グループ会社のアージングが主体となって、「内装、インテリア、ステーショナリーと同じように、お客さまをおもてなしするメニューブック」の企画、開発、製造を進めています。

例えばこちらは、お会計時に明細書を挟む伝票ホルダーです。良い雰囲気のお店で美味しい食事をして、お会計のときにプラスチックのホルダーが出てきたら興ざめしてしまいますよね。

オリジナルの伝票ホルダー

メニューブックや伝票ホルダーは、お客様が手にとって触れて見るものですから、それは企業ブランドを表すものであり、インテリアの一部であるべきです。ところが、製本業界、ものづくり業界双方とも、構造上、数がまとまらない製品の製造は難しいのです。私たちは、小ロットで、オーダーメイドのメニューブックの開発・製造を行っています。

こちらは四隅のアクセントが印象的なメニューブックです。メニュー内容をフレキシブルに変更できるようにしたいとご要望いただき、和紙調の紙は取り外しでき、お店で印刷ができます。お店の印象を支えながら、使いやすさも考えたものです。

メニューブックのカスタマイズ

私たちは、皮や布などのファブリックや紙素材など、素材業界と長年の取引があり、さまざまな素材を扱うことができます。壁紙、革、和紙、また一口に革といいましても多くのユニークな素材がありまして、宝石のケースに使われる革や車のシートに使われる革など使用して企画・ご提案しています。

こちらは、壁紙を使用したワインリストです。インテリアやファッション分野は素材開発のスピードが速いですから、個性的で印象的な素材がたくさんあります。メニューブックも内装の一部、おもてなしの一部となることで、顧客の体験価値を高められると考えております。

オリジナルのメニューブック製作

和紙を使ったメニューブックです。こちら、なかなか製作は大変なのです。お客様からのご依頼は、明確に指示がある場合もありますが、お店に伺いまして「ここの雰囲気に合うものを提案してほしい」とご要望いただくこともあります。

和紙のメニューブック

今の時代、機械で作れば何でも作れますが、画一的になります。でもレストランやホテルに訪れるお客様は特別な体験を求めています。そこで、デザイナーがお店の内装や雰囲気、コンセプトに合わせてメニューブックにオリジナリティを出そうと考えても、製作の依頼先がないのです。私達は、既存の画一的なメニューブックに革新を起こしたいと考えています。

「オリジナルのメニューブックや本を作ろうと思っても依頼先がない」のはなぜですか?

製品や本は、数を多く作ることを基本にしています。多くというのは、数千レベルではなく、数万以上です。量産でしたら機械が回せますから、1つあたりの単価は安くなりますが、すべて同じ製品になります。レストランもホテルも、数万もメニューブックは必要ありませんので、妥協して、市販品の中から、選んでいるのが現状です。

さらに、日本の製本業界の場合、小さな企業の分業体制で1つの製品を作る業界構造となっています。型抜きをする会社、表紙を貼る会社、それらを集めて製本する会社など、それぞれの工程で別の企業が担当するのです。

そのため、オリジナルの本やカバーを作ろうと思いますと、それら複数の企業をマネジメントして仕事を行う必要がありますが、その幅広い知識を持っている人が少ない…という壁が存在しています。

海外には、1社で一貫して対応することが一般的な国もあり、なぜ日本はこのような分業構造ができあがったのか、はっきりとした理由は私には分かりません。しかし、インテリアデザイナーが内装に合わせたメニューブックのデザインを考えたとしても、それを形にできる会社がないというのが現状なのです。

私たちは、基本的には一社で対応する体制を構築していますので、小ロットでもオリジナルの加工が可能です。小ロット対応は大変ではありますが、お客様と、その先のお客様(コンシューマ)が喜んでいただけると、私達もとてもうれしく、やりがいがあります。

小ロットでオーダーメイドのメニューブックを作れるということですね。表紙に押してあるのが箔押しですか?

はい、そうです。こちらも小ロット対応の技術の一つです。箔押しというのは、本のカバーや手帳のカバーに金箔や銀箔が押し込まれたような文字や模様が入っているものです。凹凸のない印刷とは異なり、高級感を演出できます。

布などの素材に文字や形を押そうと思いますと、型や版が必要です。しかし、小ロットではコストが合いませんので、小林製本では版を使わずに箔押しできる技術を開発しました。イニシャルコストがかからずに、図形でも文字でも、自由な形で箔押しできます。この箔押しは当社の独自技術を活用して実現しています。他社では実現できません。箔押しの内容や素材に合わせて版もご提案させていただきます。

こちらは、ウイスキー樽をイメージして作ったメニューブックです。金箔押しのワンポイントで、全体が引き立っているでしょう?

ウイスキー樽のメニューブック

現在では希少となった活字や凸版を使った昔ながらの箔押しも行っています。ここにある文字でしたら型を作らずに箔押しできるのですが、自由な図形については難しかったのです。現在は、イラストや図柄も1個から箔押しできます。

箔押しは、通常のフラットな印刷と比べますと、やはり、インパクトが違います。金文字以外にもカラーの箔押しができますが、やはり金文字は豪華さの象徴ですね。メニューブックを変えて売上があがったというお客様も多いですよ。

凸版

今後の展望を教えてください。

今後も「機械ではできない本」をテーマに、お客様の個別のニーズにお応えしたいと思います。また、現在力を入れている箔押しですが、2色以上の箔や、紙や布以外の素材への応用もテストを行っています。

こちらは木への箔押しのサンプルです。金文字はやはり豪華ですね。

木への金箔押し

多色サンプルの龍です。

箔押しの多色押し

箔押しも含めて印象的なメニューブックを小ロットで作りたい方は、ぜひ一度ギャラリーへお越しください。さまざまなサンプルを手にとってご覧いただけます。エンドユーザ様に感動してもらえるメニューブック制作をサポートさせていただきます。



【プロフィール】

会社名 小林製本株式会社
所在地 東京都中央区日本橋堀留町2-9-8 Daiwa日本橋堀留町ビル1F
連絡先 TEL 03-3808-2772
業務内容 特殊製本
URL https://www.kobayashiseihon.jp/

会社名 株式会社アージング
所在地 東京都千代田区神田小川町3-4-5 VORT神保町1F
連絡先 TEL:03-5577-3147
業務内容 ステーショナリー企画販売/メニューブック製作/デザイン
URL http://www.aurzing.co.jp/


この記事を書いた人:Haruyo Ono

Haruyo Ono

小野 晴世 (おのはるよ)
Web Rocket Inc. 中小企業診断士
新しいアイデアで挑戦する企業の取り組みを取材します。