生産現場を支えるロボットと、人との新しいカタチ~富士機工株式会社~

富士機工株式会社は神奈川県相模原市にある生産工場における自動化・省力化のための組立設備、検査設備の設計開発を行う企業です。ロボットを活用した自動車部品の生産現場の自動化や、民生部品、コネクタ、端子台の自動組立機、検査機の設計製造を、社内一貫生産で行っています。
今回は、富士機工株式会社の代表取締役 杉本和昭さまへ、生産現場が求められる生産性向上や人手不足の問題点を自動化システムやロボットがどのように役立つのかという点についてインタビューいたしました。
最初に、簡単に業務内容を教えてください

弊社の事業は、FA(Factory Automation)、「工場における生産ラインの自動化」を支える自動組立機、自動検査機などのシステムの設計・製造です。 「生産ラインの自動化」という枠組みの中で、大きな役割を占めるのが組立工程と検査工程の自動化です。 人ではなく機械・ロボットが行うことで品質向上、コスト削減が可能です。
多軸・スカラロボットを用いて、自動車部品・民生部品の自動化設備を設計・製造したり、コネクタや端子台の自動組立機や自動検査機を設計・製造しております。
弊社の特長としては、企画立案、メカ設計、電気設計、部品製造、ソフト開発、組立、設置・調整といった工程を、社内で一貫して対応しています。 お客さまが生産ラインの自動化を検討される際、複数社とやり取りをすると、スケジュール調整だけでも大変です。例えば、1社の進捗が滞ってしまうと後の工程にも影響が出てしまいます。弊社に投げていただければすべてをマネージメントしますので、お客さまの負担が格段に少なくなります。
自動組立機、自動検査機などのご依頼は、国内の工場だけではなく国内メーカーの海外工場(フィリピン、スウェーデンなど)への導入実績もあります。EU圏内であればEN規格といったように、現地の規格に合わせた形で設計・製造を行っています。
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- 自動車部品インサートシステム
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- コネクタ組立機
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- ハウジング外観検査機
FA化というと、生産性向上を目指して、ということだと思いますが、実際にはどのようなニーズが多いのでしょうか?
「生産性を向上させるために」という考えをお持ちの企業さまは、多くいらっしゃいます。日本は長い間、低価格でものづくりを行う中国をはじめとする海外企業との厳しい闘いを強いられています。今現在、日本にある工場は、生産性を向上させることができなければ、競争力を持つことができませんし、私どもも、国内企業の「強さ」に貢献できるようにと業務を行っております。
「生産性の向上」というテーマを分解してみると、良品率の向上、製造原価の削減…人件費の削減や製造時間の短縮などがあります。
また、最近では「人手不足解消」の相談も目立ちます。日本の工場は、工場に限らないかもしれませんが、労働人口の減少という課題に直面しています。労働人口と言われる15歳から64歳の人口は、2020年は7,341万人ですが2030年には6,773万人、568万人もの労働人口が市場から減ってしまう予測となっています。このような背景から、FA化はさらに進むと考えています。

(出典)2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を含む)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html
生産ラインを、全部にしても一部にしても自動化したいとき、どのようなことを検討されるのでしょうか?
お客さま よりご相談をいただいた際、検討することとしては、求められる生産数量とタクトタイムです。生産数量は、日産・月産などどの程度の生産数量が必要かということで、タクトタイムは品物を1つ作るのに必要となる時間です。また、今後の見通しも非常に重要な要素です。
生産量の見通しに変化がありそうであれば、最初は半自動化システムを何台か並べて稼働させ、生産量が増えれば全自動システムへ移行したり、製品ライフサイクルが短い商品、たとえば携帯電話のように毎年新しいモデルが出るような商品の場合は、自動化ラインをフレキシブルに変更できるようなご提案をさせていただきます。
どの製品にも、製品ライフサイクルがあります。市場に導入されたときには生産量は少なく、急成長の成長期を経て安定した製品量の成熟期、そして衰退していきます。近年、製品ライフサイクルは短くなる一方ですから、生産ラインの自動化においても、フレキシビリティには考慮する必要があります。衰退期になった製品は生産量が少ないですから、複数の衰退期の製品を1台で共用化したいというご要望もあります。
また、量産案件が海外に行ってしまったことから、日本国内には多品種少量の案件が多く、そのような現場でどのように産業用ロボットを活用していくかということも課題の一つです。弊社の実績としては、月間の生産数3万~50万個あたりの工場のFA化実績が多くあります。
産業用ロボットというと、どのようなものがあるでしょうか?
産業用ロボットの「軸」は、人間でいうと「関節」にあたります。この関節をどのように動かすかがロボットの特徴となります。弊社では以下の4種類のロボットを使用して、自動生産システムを構築しています。
水平多関節型(スカラ型)ロボット
1980年に日本で開発されたSCARA(ロボット)が原型となっている水平多関節ロボットです。回転軸はすべて垂直になっているので水平方向の動きに特化しています。先端部は上下に動く仕組みになっており、基板の組み立て、ネジ締め、搬送など幅広い範囲で活用されています。
直角座標型ロボット
直角座標ロボットは、軸の回転がない、縦、横、高さの3方向をスライドのみの直線的な動きで稼働するロボットです。構成されるパーツ軸も少ないため剛性も高く高速な動きも可能です。複雑な動きはできませんが、動作のブレが少ないため、各種部品の組立、加工、挿入、取出し、移載、箱詰などの作業場面で導入されています。
垂直多関節型ロボット
人間の腕の構造に近い動きができるため多くの生産現場に導入されています。また、設置面積が小さいため、他のロボットと比べ台数を多く設置することができます。近年では、電子制御が可能なモーター駆動が主流となりより精密な動きが可能になっています。汎用性が高く、搬送や運搬、組立や検査といった幅広い場面で活用しています。
パラレルリンク型
今まで紹介してきたロボットの関節は、直列(シリアル)につながっていましたが、パラレルリンク型は複数の関節が並列に配置されたロボットです。モーターとベアリングで構成されているためシンプルな構造となっており、メンテナンスも比較的容易に行うことができます。作業領域は狭いのですが高速かつ緻密な動きを得意としており、検査やピッキング作業の場面で導入されています。
実際に、FAロボットの製作事例としてはどのようなものがありますか?
弊社のFAロボットの製作事例の中から以下の4つをご紹介します。
- ロボットアームでパーツをピックアップして、金型の指定された位置にピックアップしたパーツを挿入しています。
- 前工程より流れてきたパーツをピックアップし検査治具を通した後、後工程にパーツを流しています。
- 各位置に配置されたパレットからパーツをピックアップして回転させながら組み立てています。
- コネクタのパーツをピックアップし、メカの先端がコネクタパーツを右から左へと流れ作業で製造しています。
多品種少量の工場に対して、ロボットを使った自動化としての可能性は、どのようなものがあるでしょうか?
これまで職人にしかできなかった作業を自動化するロボットを開発したり、自動運送システム(ロボットによるモノの運搬)を導入したりということは行われています。多品種少量の生産現場において、汎用性の高い協働ロボットと人間が一緒に働くというケースが増えてくると考えています。
弊社としては、工場におけるロボットの活用方法の変化にも柔軟に対応し、お客さまにとって良い生産環境のシステムを作ることが大切だと考えています。
産業用ロボットと、協働ロボットとは、どこが違うのでしょうか?
産業用ロボットと協働ロボットの大きな違いは、人間と一緒のレーンで作業ができるかどうかという点です。産業用ロボットは、正確な動作を高速で行うことができ工場の作業効率に大きく貢献していますが、産業用ロボットを安全に配置する法や規制があります。
例えば、ロボットの作業範囲内に人が立ち入れないように柵を設置したり、作業範囲内に人が立ち入った際はセンサーが反応してロボットの動きをストップするなどさまざまな安全対策があります。このようにロボットはロボット、人は人と、分けて作業をするというのが産業用ロボットを活用する工場の風景です。
反対に協働ロボットは、2013年に労働安全衛生規則の一部が改正され、一定の条件をクリアすればロボットと人が同じレーンで仕事をすることが可能になりました。こうすることで、同じレーンのなかで、細かい作業は人間が行い、力が必要な作業や危険を伴うような作業はロボットが行うと行った作業の棲み分けができるようになりました。
産業用ロボットと協働ロボットの違い産業用ロボット | 協働ロボット | |
作業内容 | 繰り返しの単純作業が中心 | さまざまな作業に対応可能 |
スピード | 高速 | (産業用ロボットに比べて)遅い |
制御 | 位置制御 | 位置制御 力制御 |
安全対策 | 安全柵の設置 センサーで危険を察知 |
人と接触したら停止 |
今後のFAロボットシステム設計・製造会社として、展望を教えてください
社内で一貫してすべてできる強みを活かして、顧客のニーズに的確な提案をしていくのはこれまで通り行っていきます。協働ロボットについては、まだ業界が試行錯誤段階と思いますが、多品種少量現場でのロボット活用については、新しい可能性にチャレンジしていきたいです。
弊社には研究段階での仕事も持ち込まれるため、まだ実用化に至っていない案件もあります。日本全体として、労働力の減少の中、ロボット化で不足を補ったり、日本国内に残っている多品種少量向上が、生き残りをかけて生産性向上を高めるためにロボット化したいなど、競争力のあるものづくりに貢献したいと考えております。
【プロフィール】
会社名 | 富士機工株式会社 |
所在地 | 神奈川県相模原市中央区上溝4487-9 |
連絡先 | TEL 042-760-8117 |
業務内容 | 各種自動機・手動機の開発・製作 |
URL | http://fmt-co.jp/ |
話し手 | 代表取締役 杉本和昭 氏 |