補聴器の性能を超える集音器

株式会社エース・E&L(神奈川県相模原市)では、耳の聴こえに悩む人に対して、集音器「Choju」を開発・製造・販売しています。耳の聞こえが悪くなった時に、すぐに思いつくのは補聴器ではないでしょうか?集音器とはどのようなものか、補聴器ではなくなぜ集音器を開発されたのか?代表取締役、津田 博通社長にお話をお聞きしました。※わたし自身で、Chojuのレビューも行いました!

誰でも購入できる価格で、耳の聞こえを改善するデバイスを開発したい。

株式会社エース・E&L 代表取締役社長 津田 博通 株式会社エース・E&L 代表取締役社長 津田 博通氏



津田社長が見たある光景がきっかけで、集音器を開発しようと決意されました。

「もうしゃべらないで」

津田社長が岩手に帰省をした際、しばらくぶりに会った従兄弟の変わりように驚きました。耳の聞こえが悪くなったことをきっかけに、同居している家族との会話が難しくなり、ひとりでテレビを見る日々を過ごしていたのです。

三陸の漁師を退いた従兄弟にとって、リタイア後の生活がとても孤独なものになっていました。しかも、テレビを見ていても耳の聞こえが悪いため、ただ画面を見ているだけだと言うのです。さらに悪いことに、可愛いお孫さんにも「(会話をするのが大変だから)もう喋らないで」と言われ、補聴器を購入しようか迷ったそうです。

しかし補聴器は高額なうえ、音量調整のために病院に通う必要があると知り、「ここは田舎なので、病院までは三陸海岸の山道を車で走る必要があったのです。私にはそのことも、とても難しいように思えました。」と諦めたのでした。

その従兄弟の姿を見て、津田社長は、「自分で音量や音質が調整できれば。。。」「年金暮らしの人でも購入しやすい価格であれば。。」と考えました。

 

開発コンセプト

集音器Choju



開発のコンセプトとして

  1. 年金生活者でも購入ができるような価格で提供できること
  2. 自分自身の耳に合わせて音量・音質を調整できること
  3. 音が聞こえるだけではなく他人の声が聞き分けられること
この3点を念頭に掲げられました。

エース・E&Lの親会社であるエースエンジニアリングでは、基板・回路設計を行っており、回路設計に秀でた技術者も在籍。彼らも参加する中、開発が進められました。

試作品を作り介護施設で使用してもらいフィードバックを重ね、3年の歳月をかけChojuを開発。開発コンセプトとして掲げた、「価格」「自身での調整」「音声判別」についても、下記のような形で実現。

  1. Made in JAPANにこだわりつつ、自社製造・開発でコストを抑え、補聴器よりも安価な価格で提供。
  2. 音量・音質調整に関しても、自身で簡単に音量と低音高音の音質が調整可能。
  3. アナログ回路を使用することで、音声帯域(300~700Hz)だけではなく広い帯域の周波数(20~10000Hz)を拾い、 原音に近い形に補正・増幅させ自然な聴こえを実現。


そして現在では、Chojuは耳の聞こえで悩む多くの人々に対して悩みを解決する製品となり、日本国内だけではなく、中国・マレーシア・シンガポール・ベトナム・エストニアに広まっています。

Chojuと補聴器、集音器の違い

Chojuユーザーの方々



Chojuが耳の聞こえに悩む人々に選ばれる理由として、音がクリアに聞こえるという点があります。「音がクリアに聞こえる」ことが、自発的な刺激となり耳の聞こえの改善につながっています。Chojuと補聴器、Chojuと他の集音器の違いについて説明していきます。

 

補聴器との違い

Choju(集音器)と補聴器の違いは、医療機器かどうかの違いとなります。

補聴器は、管理医療機器と言われる医療機器に分類されます。医療機器として製造・販売するには、医薬品医療機器等法という法律のもと厚生労働省の承認を受けなければなりません。承認を受けるためには、効果や安全性について細かな審査をクリアする必要があります。承認後、仕様変更などを行う場合も都度の届け出が必要となります。

集音器は、医療機器ではないため、製造・販売する上で、厚生労働省の承認や審査は必要ありません。Chojuは医療機器としての承認や審査は受けていませんが、開発段階や販売後においても、老人ホームの利用者さまを中心に製品モニターとして使用していただき、改善できる点はスピード感をもって対応しています。

今では、補聴器をご使用していた方が、Chojuを選ばれることも珍しくありません。


他の集音器との違い

Chojuと他の集音器との違いは、左右の音量調整、音質調整ができるかできないかです。

一般的な集音器は、自分が聞こえる音量は調整できますが、左右の音量バランス調整はできません。人によっては、左右のどちらかだけ極端に聴こえが悪い場合もあります。しかし左右のバランス調整ができないため、聴こえが悪い方に音量を合わせる必要があります。

音質に関しても、人によって高音が聞き取りにくい、低音が聞き取りにくいといったケースがあります。Chojuは低音・高音の音質調整もできるため、音量を上げる以外の方法で聴こえを調整することができます。

 

世界中の聴こえに悩む人々の解決策として

大連BtoC販売展示会 大連BtoC販売展示会の様子



集音器、補聴器などの聴覚補助器を使用するのは、高齢者というイメージがありますが、年齢に関わらず聴力レベルが低く聴こえに悩んでいる人も使用しています。

WHO(世界保健機構)によると、世界で耳の聴こえに悩む人は、2018年の時点で約4.6億人もいる状況です。2050年には9億人になる可能性があると言われています。

Chojuは、現在、日本をはじめ、中国、マレーシア、シンガポール、ベトナム、エストニアのアジアと一部ヨーロッパに流通していますが、今後は、アメリカ、ヨーロッパ全土へ積極的に進出をしたいと考えています。

集音器 Choju 使用レビュー

今回、エースE&Lさんのご厚意により、Chojuをお借りすることができましたので、使用方法や装着したレビューをお伝えします。今回、レビューで使用するのはChoju2という型番になります。Chojuとの違いはテレビの音声をより聞き取りやすくしたモデルとなります。それ以外のスペックはChojuと同じです。

私自身、耳の聴こえ方に悩みはありませんが、正常に聴こえる人でもChojuを装着することで、どれくらいの範囲まで聴こえるのか実験してみます。

使用方法・セッティング

このような桐箱に一式が入っています。

Choju桐箱

Choju開封

本体とイヤホンを取り出し接続します。イヤホンの先端を本体の1と2の差込口へ刺し、1のイヤホンを右耳へ、2のイヤホンを左耳へ装着しましょう。インナーのサイズが合わない場合、サイズ違いのインナーも付属しています。黒いフサフサがマイクです。フサフサの正体は、ウインドジャマーといって風などの余計な音をカットするものです。

Chojuイヤフォンジャック

Chojuマイク

本体右上のダイヤルを時計回りに動かすと電源が入ります。これはイヤホンから聴こえる音量となります。1~5の5段階で調整ができます。

Choju電源



中を開けて細かい調整を行います。では、開けてみましょう。カバーを開ける際は少しだけ力が必要です。

Chojuパネルオープン



大中小でマイクの感度を調整します。

Choju調整



左右調整や音質調整の際は、調整用のパーツを使用します。先端がマイナスドライバーのような形状になっています。この先端を各調整箇所に差し込み回して調整します。

Choju調整パーツ



左右調整で左右の音量バランスを調整します。1側に回すと右側が大きく聴こえ、2に回すと左側が大きく聴こえます。真ん中に合わせる場合は、センターでカチッと合わさるセンタークリックが付いています。

Choju調整パーツ差し込み



音質調整は、低音、高音を左右別々に調整ができます。音質調整は5段階ではなく、3がフラットの状態で、2、1と回すと帯域が減少され、反対に4、5と回すと増幅されます。

Choju音質調節

実際に使用した

Chojuを装着して、部屋の中、屋外に出てみました。セッティングは、音量小、ボリューム2~3、左右バランスは真ん中、音質はすべて3です。マイクは胸の真ん中あたりに装着しました。

Choju設定例

部屋で使用した感想は、聴こえる全ての音が、大きくクリアに聴こえました。

例えばパソコンのキーボードを打つ音だとキーを押した音はもちろん、押したキーを離した時の細かい音まで聴こえます。もう少し聴こえる音に集中すると、キーを打ったときのキーボード全体が響鳴している細かい低い音も聴こえます。

パソコンキーボード



外に出る前の玄関でも、靴を履く音、鍵の開け締めの音、玄関を一歩出た時の音、聞こえる音が新鮮に聴こえます。特に感動的だったのが落ち葉を踏んづけた時の葉っぱが砕ける「パリパリ」という音が「パキパキ」とキレイに聴こえたことでした。

落ち葉を踏む



その足で近くのショッピングセンターに行ってみました。家とは違うタイプの屋内なので、聴こえ方も色々と変化がありました。広がりのある空間なので、空気感や物音が余計に反響する聴こえ方でした。こういうときに自分で調整できるので便利です。

ショッピングセンター

人の喋り声もよりクリアに聴こえます。ちょっと驚いたのが、お店の前面で液晶モニターで動画を流しているところがあったのですが、その動画から流れてくるナレーションや人の声が思いっきり生身の人間が喋っている聴こえ方と同じでした。



大きい音がそのまま大きく聴こえるのか?

使っている間に、1つ疑問が湧いてきました。それは、「大きな音は、より大きく聴こえるのか?」という点です。例えば、大声で呼ばれた場合、その音は増幅されるのかということです。

実際に自分でマイクに向かって大きな声を出してみました。

マイクに向かって大声
実験結果は、「ある程度の音量になると、抑制がかかった音量になる」というものでした。マイクに大声を出した際、少しだけ歪んだ音になりつつも、音全体に抑制がかり、それ以上は大きくなりませんでした。

これなら、屋内外で大きな音が不意に鳴っても、聴こえてくる音は抑制されるので、いきなり大きな音がイヤホンから聴こえるということはなさそうです。

レビューまとめ

  1. Chojuのセッティングはダイヤルを回すだけの簡単操作。
  2. 装着した際の聞こえは、今まで聴こえなかった音まで聴こえて新鮮に感じる。
  3. もし大きな音を拾ったとしても、ある程度の音量レベルからは、抑制がかかる音になるので大きな音が増幅されることはない。

耳の聴こえに異常はない私が装着しましたが、いつも聴こえている音がよりクリアに聴こえたのには驚きました。加齢と共に聴力も衰えてしまうと、家族とのコミュニケーションも疎遠になり孤独になってしまうこともあります。

そのような時にChojuがあれば、聴こえの問題を解決できるのでは?と強く思いました。もっと多くの人に知れわたる製品になることを陰ながら応援したいです。



企業情報

会社名 株式会社エース・E&L
所在地 〒252-0328 神奈川県相模原市南区麻溝台6-9-9
連絡先 Tel:042-740-8111 Fax:042-719-3912 / この企業へのお問い合わせ
業務内容 Chojuシリーズの企画・設計・製造・販売
URL オフィシャルサイト : https://ace-el.co.jp/




この記事を書いた人:Tadayuki Emoto

Tadayuki Emoto

江本 忠之(えもと ただゆき)
Web Rocket Inc. 取締役部長
コーヒーが好きです。SEO検定1級